随筆

向かう先

太陽は、あくまでも誰にでも優しく、節操がないと思われる程に、その眩しき光を撒き散らす。

でも月は違う。陽の光に浴びれない月は、何処までも寒い黒が続く、穴だらけの惨めな存在でしかない。
彼の光によって初めてその命は灯され、暖かさを知り、潤いを得る。
その時点からすっかり魅了され、惹きつけられ、その引力から決して逃れないのが運命である。

しかし現実は非情である。やがて軌道が徐々に離れて行き、超えない壁に陽の光を阻まれる時、月は絶望した。
もう二度とあの優しさと暖かさには出会えないだろう。奪われ、再び寒い闇の中に戻され、月は枯れるまで涙を流した。

……
……

果てしなき朔夜が続く。

……
……

そ して今に至る。月は思う。ならば自ら光を出そう。あなたなら、きっと今より輝ける場所へ行けるだろう、それは、何時しか言われた言葉。光が届かない今で も、道を示してくれている太陽。思いを胸の中に秘め、月はもう一度向かう先を定める。離れるのが運命なら、せめてその期待に応えたい 。彼女への愛は、すべてここにて収束する。

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